2016年1月4日月曜日

名古屋城、木造天守再興に向けて〜

本日の日経新聞に掲載されていたが、名古屋城の木造天守再興の動きがある。鉄筋コンクリートで再建されてから既に半世紀が経過しており、老朽化のための補強もしくは建て替えが必要となっている。
河村市長は、これを機に木造での建て替えを声高に掲げており、市民への理解を求めるため、タウンミーティングを精力的に開催している。

このような動きがあること自体を知らなかった自分の勉強不足を恥じるともに、名古屋市長に大きなエールを送りたい。大げさかもしれないが、今後の名古屋市の観光事業を左右する事業だと考える。

日本政府が観光立国を宣言してから数年が経つ。
円安効果もあり、日本を訪れる外国人は1800万人に迫る勢いである。(2015年11月時点)
私は京都に通勤しているが、外国観光客を見ない日はなく、また、趣味である城巡りをしている中でも外国人に遭遇する機会は多い。外国人が日本を1つの「海外旅行先」として認知していることは間違いなく、さらには2000年という長きに渡る日本の歴史・文化に興味も示している。
つい最近も日本に出張に来ていた中国人を大阪城に案内し、とても興奮していたことを思い出す。

このような中、名古屋城を建築当時の木造で再建することにどのような意義があるかを考えてみたい。

①話題性による経済効果
間違いなく日本中から、また、海外からも観光客を集客できる。黙っていても旅行会社が機会を逃さず、ツアーを組んでくれるので、一定の経済効果は必ず出て来る。当然、名古屋市、愛知県、観光庁が一体となってアピールすれば、数倍の差は出て来るであろう。
大切なのは、機会を逃さず、やりすぎず、長期的な視点を持ってやるということである。

②歴史・文化の再認識
名古屋城は第2次世界大戦の空襲で焼けたため、近代まで天守が残っており、資料も豊富だと言われている。再建にあたっては、資料の読み返しが再度されることになり、名古屋城の建築技術や歴史的背景も再認識されるに違いない。式年遷宮ではないが、このような定期的な技術継承はやはり必要である。

③夢や希望を発信する
補強、建て替えどちらにしても億単位での出費は避けられない。使う費用の大小はあるにせよ、億の金を使うのであれば、後世に夢や希望を、地元に誇りを与えるべきだ。昨年、松江城が国宝認定された。中国地方の人にとっては、明るい話題であったに違いない。名古屋人にとって誇れる地元、日本人が日本に誇りを持てる事業を進めるべきである。
木造でなくてもいいという議論があるかもしれないが、私は木造にこだわるべきだと思う。木造にこだわるべきでないと思う人は、一度、木造建築の城に行ってみるといい。なんとも言えない木の感覚が手足で感じられ、歩く度にきしむ床、木に合う畳、やはり木造は素晴らしい。
ヨーロッパの城が鉄筋コンクリートだったらどう思うか?それなりの感度はあるかもしれないが、やはりあそこまでの感動は得られないだろう。石を積み重ねた重みのある重厚な感覚こそ、感動の源だと思う。


これらの効果は、必ず出て来る。そう信じることである。

最後に注意点を述べたい。

①城単独の再興にならないように注意する。
天守だけを再興しても効果は限定的である。城の再興に合わせ、周辺地域の整備も必要である。例えば、観光バスの停留所、市民の憩いスペース、活動広場の整備、名古屋駅を中心とした観光ルートの確立など、トータルで考える必要がある。

②市民の声は程々に。ただし、説明責任を果たす。
巨額の血税を使う事業に反対は付きものである。全員一致で賛成などということは絶対にないので、市民の声を1つにまとめようと思ってはいけない。リーダーは常に孤独であるので、やると決めたらやり切る必要がある。
ただし、独裁はいけない。事業の意義をしっかり説明し、経費は最小限にとどめて、最大の効果を生み出せるように努力と工夫を重ねる必要がある。

東京・大阪に比べてインパクトの薄い名古屋。
経済だけではなく、文化的な意味でも日本を引っ張っていく意気込みを期待したい。

0 件のコメント:

コメントを投稿